鯛の浜焼き



当店を代表する料理であります

『鯛の濱焼』

その歴史は平安時代まで遡ります。
塩田で出来たばかりの熱々の塩の中に
鯛を入れて蒸し焼きにしたのが始まりと言われています。

塩田で働く浜子さんが被っている
伝八笠に鯛を包み、朝廷や幕府に
献上されていました。

大変貴重な贈答品として現在でも
瀬戸内沿岸各地で製造されています。

ここ尾道では、鯛に塩をまぶし、
専用の窯の中で炭火焼にする製法が伝わっています。

当店で鯛の浜焼きを提供している理由は、
たまたま頂いた焼きたての浜焼きの
あまりの旨さに感動し、
今までの贈答品としてでは無く、
会席料理の中で鉢肴(焼物)として
焼きたてを提供したいという思いから
前身の店から五年以上焼き続けています。

焼きたては…まぶした塩がなじみ、
専用窯で炭火の蒸し焼きにすることで、
さらに鱗に護られた身は
しっとりとして芳醇。
鯛を食べ飽きた地元の方でも
その旨さに驚くほどの味わいです。

元々贈答品であるせいか、地元の方でも
この鯛の浜焼きを食べた事のある方は
ほとんどおられません。
食べた事のある僅かな方でも、
焼きたてを食べた事のある方は皆無です。

本来の浜焼きは召し上がるまでに
早くても丸1日、輸送で経過する為
一時間半近く、時間を掛けてゆっくりと
焼き上げますが、当店の焼き方は
全く異なる独自のものです。
全体に火が通った瞬間の熱々を
お召し上がり頂くので焼き時間はおよそ30分弱です。

両者とも鯛の浜焼きですが、塩の当て方や当てる時間、
焼く距離、炭火の火力、焼き方、様々な微妙な
調理法の違いによって、味わいは全くの別物となります。

浜焼きを焼かれている窯元の方がある時
全ての魚で浜焼きを試してみたところ、
鯛以外の魚の浜焼きは全て美味しくなかったそうです。

鯛は正に古代から魚の王様です。
それを科学や理屈で説明すること自体、野暮であると私は思います。

そんな鯛と、海そのものである調味料の
塩だけで作られるこの料理の崇高さこそが最大の魅力と言えるでしょう。

浜焼きを食べ終えた後のアラと
利尻昆布だけで作るお出汁で仕立てる
鯛の濱茶漬けもまた格別な味わいです。


伝統の継承とは、その伝統の持つ本質の継承こそが最も重要であると思います。